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2014-01-03

小説 『Y's BAR へようこそ』 第1話 【夢を見る人、夢を叶える人】

『マスターはさぁ、どうしてBARの経営を始めようと思ったの?』

何気ない鈴本の問いかけに、アイスピックで丸氷を整えていたマスターの手が止まる。

『それは単純な理由ですよ』

新しい丸氷に入れ換え、鈴本のボトル『ファイティング・コック15年』をロックグラスに注ぐと、

それを3回ほどゆっくりとステアし、コースターにグラスを置いた後マスターは話しを続けた。



『晴さんは、どうしてカメラマンになったんですか? 理由は僕と同じだと思いますよ』

一つの物事に心から情熱を注げる人間ならば、誰もが納得できる単純で純粋な理由がある。



『うーん、そうかぁ・・。やっぱり好きなことしか続けられないよね』

鈴本が注ぎたてのファイティング・コックのグラスを持ち上げると、

頭上のライトに照らされて、赤褐色の液体は静かに波打っていた。

『Y's BAR 』の常連客の一人、鈴本晴彦はスポーツ新聞『真正スポーツ』の記者で、

これまでに数多くのスクープ写真を撮り続けてきたプロのカメラマンである。



『俺は〇〇になるって、宣言するだけなら簡単ですけどね』

マスターは続けた。

『それでも本気の人間は勝手に始めますよ。本当に大好きなことは』

『そうそう、俺も機会があれば・・みたいな言い方をする奴の中で、

本当にそれをやり始めた人間なんて、今までほとんど会ったことがないよ』

鈴本もマスターに続いて言葉を返す。



夢を見る人、夢を叶える人。

両者の違いは『行動を起こせなかった人』か『行動を起こした人』か、それだけなのかもしれない。

東大のエリートが、その知力でどれほど素晴らしいアイディアを思いついたとしても、

『机上の空論』で終わっているうちは、永遠に成果を得られる日は訪れないのである。



『頭の良い人間より、度胸のある人間のほうが上手く行くことが多い』

グラスを磨きながら、マスターは補足して話しを続けた。

『ホリエモンこと堀江貴文くんが、かつてそういうコメントを残しています』

『うん・・、そうかも知れないね・・・。マスターも飲んでよ、良かったら』

鈴本はそう言うと、4杯目のグラスをグイッっと飲み干した。

『一杯ご馳走になります』

マスターがストレートグラスを取り出したところで、店の扉がカランと鳴り響いた。



『いらっしゃいませ。Y's BAR へようこそ』



 END

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