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2013-08-25

犯罪者は隣に住んでいる (後編)

『車の塗装をはがされる』という悪質な被害を被った私。

話は事件から数日前にさかのぼる。



私は浴槽で半身浴をしながら本を読むことが日課だった。

ペットボトルに入れたミネラルウォーターを飲みながら、

じんわりと汗をかきつつ、ビジネス本などを読みふけるのだ。

当時はまだサラリーマンだった私にとって、最もくつろげる空間がそこにあった。

そう、隣の女性宅に【あの男】が転がり込んでくるまでは・・・。



おそらく、誰もが目にしたことや聞いたことがあるだろう。

ドラマなどで、病人が激しく咳き込み吐血するようなシーンを。

隣の男は、建物中に響き渡るように毎日毎日咳き込みながら通路を歩く。

まるで己の存在感を誇示するかのように、『俺がいるぞ!!』と言わんばかりに。

2週間も経過した時点で、風邪などではないことは明らかだった。



理由など興味もないが、気が小さい男にありがちな行動であろう。

同じ階の住人とエレベーターで鉢合わせるのが嫌なのか?

とにかく私達夫婦以外の住人も、全員が聞こえるほど激しく咳き込むのである。

浴室は通路側に面していたため、私のくつろぎの時間は隣の男によって壊された。

そんなある日、いつも通りに咳き込みながら私の部屋を横切る男に、

ブチ切れた私は浴室から怒鳴った。

『うるせえよっ!!!』

男の咳はぴったりと止んだ。

ほらみろ、やっぱりワザとじゃねえか!?

住人とトラブルは起こすまい、そう決めていた私だったが我慢の限界だった。

しかしそれを機に、男は咳き込むのを止めた。

やはり怒鳴って正解だったな、他の静かな住人さんも一安心だろう。

私はそんな気持ちで、再びマンションには静けさが戻った。

事件が起きたのは、その数日後のことである。



事件当日、警察の到着を待つ間、マンションの住人が4人ほど私の車を覗いた。

被害状況を見る時の『ヤジウマの心理状態』というものは、

心からの同情であろうと、ただの興味本位であろうと、パターンは同じである。

『まず被害状況を見て、その被害者がどんな表情をしているか?』

これを無意識に行なうのが、通常の人間心理というものである。

『ひどいことされたねえ?』皆一様に、私の顔を見ながら声をかけてくれた。

そう、一番最後に来た隣の男以外は・・・。

隣の男は私と一度も目を合わせることなく、車だけを覗いて立ち去った。

その不自然さが、私を確信へと導いた。



警察に車の被害届を提出する際、そのことが頭をよぎったが、

それを裏付ける証拠は何一つなく、客観的に観れば『全て私の憶測』にすぎない。

駐在所の警官が、不定期で深夜のパトロールを続けてくれたことや、

私も部屋のベランダから自分の車を目視できたことなどから、

しばらくは様子を見ることにし、この一件はひとまず幕を降ろした。



気性の荒い私が何故、隣の男に直接詰め寄らなかったのか?

『やったのはお前だろう!?』言うのは簡単である。

しかし状況証拠すらない今回の一件、逆に名誉棄損で訴えられることもあり得た。

それよりも何よりも、このような『人の道から外れた卑劣な犯行』をする男だ。

さらに逆恨みを膨れさせ、うちの嫁に危害が及ぶことを最も警戒したのだ。

私一人なら、おそらく男を呼び出し何らかのケジメを取ったであろう。

これが『守るべきもの』がある人間の弱さなのか?

私はそれを初めて自覚し、事件の夜は悔しさと怒りで眠ることができなかった。



法に触れることなく、この男に制裁を加えるにはどうしたら良いのか?

私なりに調べてみたが、やはり物的証拠は不可欠だった。

不動産業者が、住人の個人情報を他人に明かすことはできない。

しかし、明らかに他人の生活に危害を及ぼす住人だと判断されれば、

その証拠となるものを用意することで、契約を解除することはできる。

ただ今回のケースは、契約者は何の罪もない一人の女性であり、

そこに契約時には存在していなかった人間が居候したという状況だ。

夫婦でもない限り、一番難しいケースなのだと言う。



私は『事件の真相は、私の憶測だ』と断った上で、

その男が来てから、マンションで起こったことを全て不動産業者に話した。

その男がベランダのポールを手で叩き続けて、ポールが湾曲していることや、

その男がベランダから物を投げているのを、向こう隣のおじさんが目撃した話しや、

奇声を上げたり、契約者の女性にわめき散らす声をしょっちゅう耳にすること、

一番仲の良かった、建物のメンテナンスをしているおじさんも、

私の証言通りの【隣の男の奇行】を、実際に聞いたことがあると話してくれたのだ。



これは、このマンションに住んでいる人達の為に私が残した証言である。

次の契約更新時に隣の女性が引っ越さなければ、

契約満了を待たずに私達は退去する胸を伝え、業者を後にした。

私が現在の住居に越した経緯は、こんな事件も関係していたのだ。



すでに独立に向けての準備を始めていたこの時期、私が出した結論は、

『こんな次元の低いことに、労力を使うのは時間の無駄』だということ。

私は、遺恨を残すことなくトラブルを避ける道を選んだ。



その男と顔を合わせたのは、マンションに住んでいた間で3度しかない。

事件の後、その男は古いタイプの【白のオデッセイ】から、

中古でグレードが1番低い【白のセルシオ】に乗り換えていた。

隣の駐車スペースが空車なのをいいことに、またがって『ヤクザ停め』をしたり、

チンピラのように振舞ってはいるが、作業着を着て出勤するただの会社員だ。

最後に鉢合わせた引越しの数ヶ月前、男はブタのように太っていた。



そのブタへ、最後にメッセージがある。

『おいブタ、俺は何もかも知っているぞ。

ばれてないと思っているのはお前だけで、お前の話はたくさんの人間に報告してある。

あのマンションを通るたびに、話を聞いたタクシーの運転手や俺の仲間が、

入り口近くに停めてある、お前の白いセルシオを見ているぞ。こいつだってな。

心配するな、俺は復讐なんてしない。お前は争う価値もないほどレベルが低い。

俺は、お前と同じレベルの人間にはなりたくねえからな。

でもな、車がお前に何をした?

自分がやられたらどんな気持ちだよ?車が好きなんだろ?

俺は神を信じちゃいないが、人の道を踏み外すような真似をして、

自分だけは幸せな人生を送れるなんて思うなよ?

他人を傷つけた代償は、どんな形であれ、いつか必ず自分に返ってくるぞ。

しかも、自分がしたことの3倍以上の大きさになってな。

俺は何もしない、お前は放って置いても自滅する。

その時は、自分がこれまでにしてきたことを後悔しながら生きていけ。

お前ほど頭のおかしいブタに、俺は2度と会うことはないだろう。

罪を償わない限り、お前にまともな人生を送る資格はない。』



* この物語は、ある賃貸マンションで起きた実話である。



 END





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コメント

面白くなーい

なんだ、、、必殺右クロスで瞬殺しちゃって3年くらい入ってました!、、、って話だと思ってたのに。

よく我慢したねえ。

一昨日もアサリが遅すぎて暴れだすんじゃないかと冷や冷やしてましたよ。はっはっは。


ま、人生いろいろあるよね。

また飲みに行きましょう。

Re: 面白くなーい

先生、もしもこの世から一つだけ罪が消えるなら、
俺は間違いなく、ブタを素手で殴り殺します。

泣きながら逃げ惑うブタを、ヘラヘラと笑いながら {(-_-)}

多分、引っ越さなかったら何かしちゃったでしょうね w

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