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2013-08-24

犯罪者は隣に住んでいる (前編)

2010年10月11日、その事件は何の前触れもなく起きた。

当時、まだ結婚前だった嫁と【ある賃貸マンション】で暮らし始め

ちょうど1年が経過した頃の、穏やかな朝の出来事である。



その日は、以前から嫁と友人の3人で約束していた映画を観に行く予定だった。

午前の9時過ぎ頃、私は自分の車を取りにマンションの駐車場へと降りた。

私は黒いミニバンに乗っているが、常に綺麗な状態で使用しているため、

あの日に観た、車の異様な光景は今も脳裏に焼きついて離れない。



異変には、車に向かう途中で気がついた。

遠目からは、ボンネットの上で鳥が羽を広げて死んでいるような光景に見える。

しかし、それは羽ではなかった。

私の車の塗装がベロベロにめくれ上がり、鳥の羽のように隆起していたのだった。

『屋根も後ろもやられてるよ』背後に回った嫁が言う。

私は全てを理解した。

『これは、剥離剤だ』



なぜ、すぐに剥離剤(はくりざい)だと解ったのか?

警察が来るのを待つ間、私は嫁と友人に説明した。



20代の後半、あるキャバクラに勤めていた女の子と仲良くなり、

パチンコで儲かった金を持っては、時々飲みに行っていた時期がある。

私が彼女に気に入られたのは、一切口説いたりしなかったからで、

お店が休みの日は、カラオケやラーメンを食べに行ったりもしていた。

そして私を信頼してくれた彼女が、実は彼氏がいることも告白してくれた。

これは、その女の子から聞いた話だ。



昔、店の客にしつこく交際を迫られて困っていたのだとか。

当時の彼女には交際している男性がいたのだが、お店の建前上NGだ。

当然その男にもフリーだと言ってあったし、他の女の子同様【お店のルール】だ。

理不尽に断れば店の指名客を一人逃すことになるが、あまりにもしつこかった為、

『店を辞めるまで、誰とも付き合う気はない』と、強い口調で断ったそうだ。

それ以来、その男が店を訪れることはなかったという。



数日後、店の裏に止めてあった彼女の車が『私の車と同じ状態』になっていた。

『あの男だ!!』彼女はすぐに確信したが、もちろん証拠はない。

その子の彼氏が【自動車整備士】だったことから、

一体車に何をされたのかが判ったのだという。

私はその話を聞いていたことで予備知識があった。

『おそらく、これがその症状だろう』と、容易に判断できたのだ。



水商売にトラブルは付き物だ。

特に指名客を取ることで日当に課金されるキャバクラ嬢などは、

言葉は悪いが『男をその気にさせてナンボ』の商売である。

逆恨みでもされれば、大きな事件に繋がりかねない。

十分な注意が必要であろう。



そんな話をしている間に警察が到着した。

車の状態を視た警官が、あまりの悪質さに驚き【県警の鑑識】も呼んでくれた。

こんな不愉快な事件に、嫁と友人を付き合わせる訳にはいかない。

私は友人に詫び、彼女の車で嫁と映画に行ってきて欲しいと二人を送り出した。



それにしても解せない。

私はこのマンションに越して以来、誰ともトラブルなど起こしてはいない。

確かに気は短いほうだが、筋の通らないことでケンカなどしない。




『なぜだ?』現場検証の中、私は真剣に考えていた。

もしも【愉快犯による無差別犯行】であるならば、隣にある嫁の車にもかけるはずだ。

ましてや、高級車を痛めつけて楽しみたいのであれば

嫁の車の隣にある【ハマー】にも、私の車の隣にある【プリウス】にもかけるはずである。

これは、『明らかに私の車だけを狙った犯行』である。

剥離剤が無くなるまで、私の車にかけ続けたのであろう。



『逆恨みなんて・・・心当たりがない』

通りかかったマンションの住人達が、口々に同情の言葉を述べる中、

大きな音でゲホゲホと咳き込みながら、駐車場に降りてくる男がいた。

隣の部屋に住んでいる男だ。

いや、正確に言うと『隣に住んでいる、私くらいの年齢の女性の部屋』に

最近転がり込んできた、見た目の年齢は30手前くらいのチンピラ風な男だ。



『こいつだ!!』

私は一瞬で確信した。

そして、つい数日前に私が発した【たった一言の言葉】を思い出したのである。



* この物語はノンフィクションである (後編に続く) 



 END

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コメント

面白ーい

早く続き読みたーい。

Re: 面白ーい

先生、俺は被害者なので面白くは・・・(−_−;)

まあ、STORY的には良いですかね?
後編をお楽しみに。

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