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2013-07-14

Y の告白

あれは高校生活最後の夏だった。
インターハイも終わりハンマー投げの選手を引退した俺は、
『競技生活が終わるまで』と断ち続けていたタバコを、再び吸い始めていた。
その夜は街で夏祭りが開催され、多くの人で賑っていた。
俺は、リーゼントパーマを宛がった頭でジャージボンタンを履き、
ポケットにはセブンスターを忍ばせ、我物顔で街へと繰り出して行った。



俺が調子に乗るのも無理はない。
地元では既に喧嘩を売られることも無くなっていた俺の、遊び仲間はガラの悪い奴ばかり。
そこに競技生活で遊べなかった反動も加わり、俺の遊び心は制御不能になっていた。



屋台の立ち並ぶ駅前通りに辿り着いた俺は、暗がりでタバコを吸っていた。
ふと目を向けた先の、少し離れた所から俺を呼ぶ声が・・・。
『ゆうき~!?何してんの?』
同学年で双子のヤンキー姉妹の片割れ、Hだった。
髪の毛を綺麗に纏め上げ、可愛い浴衣姿でご機嫌な様子だった。
『酔ってるのか?』
そう聞いた俺の腕に絡み付いてきたHは、
『一緒に飲もうよ?』と微笑んだ。
うん、悪くない・・・。
俺は小柄で細身のHと腕を組み、スナックへと向かって歩いた。



当時は【カラオケボックス】が地元にようやく造られ始めた頃で、
それまでは、男女共に酒を飲んでカラオケを歌う場所はスナックだった。
店に入ると、双子のもう一人がいた。
その隣には何度か遊んだことがある同学年の女が二人、
そして、30代半ばで元ヤンの高校OBが二人座っていた。



全員で乾杯し、大いに盛り上がっていた。
OBの二人がキャロルの『ファンキーモンキーベイビー』を歌いツイストを踊れば、
俺も負けじと永ちゃんの『Ⅰ LOVE YOU OK』を熱唱する。
これは運命なのか?そんな予感さえ感じた夜だった。
俺は少し前からHのことが好きだったから。
このままHを連れ出してしまえば、もしかしたら俺たちは・・・。
そう、あの事件さえ起こらなければ。



そのスナックで飲み始め、1時間ほど経った頃だ。
Hの女友達の一人が度々外に出るようになっていた。
酒で舞い上がっていたのだろう、もっと仲間を呼んでくると・・・。
しかし俺達は未成年、嫌な予感は的中した。



『はい~!!警察~!! 解るな~?、そのままね~。』
いかにも慣れた口調で、私服のベテラン風な刑事とオマワリが二人入ってきた。
店の出入りを繰り返していたHの女友達には【補導歴】があった。
顔を覚えていた私服巡回の刑事に、スナックから出入りするのを目撃されたのだ。
女達は全員、同学年だと見破られていたし既に覚悟をして黙り込んでいた。



『あんた達も未成年か?』
公務員らしい嫌味なマニュアル通りの質問に、OBの一人が噛み付いた。
『オマワリさんよ~!! 俺が未成年に見えるか~!? あ!?』
私がOBを抑え落ち着かせていると、
『悪いね、一応確認するのも仕事だから』と刑事が言う。
俺も高校生には見えない風貌だったことから、
OBの後輩で未成年ではないと認識され、全く質問されなかった。

警察の事情徴収に対してOBは、
『未成年だとかは知らね~よ!!この店で会って一緒に飲んでただけだ』
偶然会ったのは本当らしいが、HはOBと知り合いだった。
できる限りかばってくれていた。



結局OB二人の容疑は晴れ、女友達全員が補導されることに。
署に連行される前に、俺が口を開いた。
『ちょっと待ってくださいよ!!』
俺が何を言おうとしているのかを察したHが、目配せをして伝えてくる。
『ゆうき、言わなくていいよ!! そのまま黙ってて』
自分が誘ったことに責任を感じていたんだろう。
お前・・・いい女だな。



男っていう生き物は、くだらないことに意地を張る奴らのことを言う。



俺達はその後、全員が【無期停学処分】を受けた。
スナックでの飲食代は、OBの二人が支払ってくれたそうだ。
俺がテーブルに置いていたセブンスターも、
事情徴収中にOBがわざと吸ってくれたことで救われた。
『先輩、感謝です』



停学明け、廊下でHと会った。
『ゆうき、ごめんね・・・。』
俺はあの夜、自分から言った。
『オマワリさん、俺もその子らと同い年です』と。



ヤンキーにも仁義はある。
仲間を決して売ることなく、自分達だけで補導されようとしたH。
もちろん他の女友達も、俺が同学年だとは一切口にしなかった。
すでに『フィットネスクラブ』に内定を決めていた俺を、
女友達全員が守ろうとしてくれていたのはよく解っていた。
そこで俺だけが助かって、みっともねえ男をさらすのは嫌だった。
『そういうのをオメー、カッコ悪いっていうんだよ』



『おい!!お前ら!!』
俺とHの間に、体育教師が割って入ってきた。
『お前らを今後つるませるなって言われてるんだよっ!! 解るよな?』と。
ほとんどの教師は生徒を育てるのではなく、己の保身のためだけに動く。
危険因子を排除し続けるのが奴らの本業だ。



ハンマー投げの選手時代は、新聞にも記事を取り上げられた俺。
当時の担任からは、『輝かしい経歴に泥を塗る行為だ』と・・・。
Hは俺に対して罪の意識を感じていたらしい。
『自分が誘わなければ・・・』と、友達に話していたそうだ。
気がつけば、向こうから距離を置かれるようになっていた。



俺達は人の物を盗んだり、誰かを傷つけた訳じゃない。
人間本来の欲求に従っただけだ。
ただ、それが未成年には認められていなかっただけのこと。



あの時のHに、1つだけ聞いてみたいことがある。



『お前も、俺のこと好きだったのか?』



これは高校3年生の夏、たった3週間の間の記録である。



* この物語は ノンフィクションです



 ~END~









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コメント

かっこええのお、、

高校は男子校で女といえば購買部のオバちゃんしか居なかったから、、、うらやましい。

学校の隣に下宿してたから、俺の部屋もタバコ部屋だったけど、、、補導はパチンコ屋で何度か危機一髪、大丈夫だったなあ。

稲さん、今もモテルもんね。

でもこうゆう文章って夜書いて、朝読み返すと恥ずかしくならない?

Re: かっこええのお、、

先生、男子校だったんですか? 初耳です。

読み直すと恥ずかしいので、もう観ません (笑)

やはり、物語はフィクションに限りますね ( ̄^ ̄)ゞ

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